【コラム・ネタ・お知らせetc】グッドスマイルカンパニー "高速道路"と"渋滞"
こんにちは。松戸の不夜城グッドスマイルからアキです。今夜は、訳あって(!)前回掲載時からそのまま2週間の中国滞在からの帰国前々夜です。もうすぐ日本のご飯が食べられるので上機嫌。中国滞在中に読んだ本がとっても面白かったので、一節を引用させて頂いて今回のコラムを書きたいと思います。 その本は、梅田望夫氏のウェブ進化論


梅田望夫氏のウェブ進化論
梅田望夫氏のウェブ進化論。タイトルは堅いですし、ちくま新書なので、一見気楽な本には見えませんが内容はロジカルにして痛快!さすがにベストセラーです。是非皆様も手にとってください。

ウェブ進化論は、ウェブの進化は何処に向かい、社会に何をもたらすか。つまりそういうことが書いてある本なのですが、『 インターネットの普及がもたらした 学習の高速道路と大渋滞』という一章があります。

梅田氏は、将棋の羽生さんの言葉からの考察として、以下の様に展開します。
ITとネットの進化より、ある分野の学習に必要な情報は極度に整理、体系化され、その膨大な情報を、誰もがほぼゼロコストで共有出来るようになった。且つ、将棋で言えばネット上の対戦サイトで、プロアマ問わずに場所と時間のコストを気にせずに実践を積む場がある。これによって、若者が大変なスピードで並のプロ以上の強さを得ることが出来るようになった。これが「学習の"高速道路"」です。情報が一旦文書化、データ化されてネット上に提供されれば、グーグルのような洗練された新しい道具によって、とたんに分類、順列化され共有される。ある分野の学習をしたいと考える後からの世代は、過去の叡智を高速道路を疾走するように吸収することができると言うわけです。なるほど。

その先には、疾走してきた人たちが同様にたどり着く「プロ一歩手前」の段階があり、そこにどんどん人がたまっていってしまう。これが"渋滞"。高速道路によって、一斉にある分野の平均レベルが上がるが、世の中のニーズのレベルが、増えていく「プロ一歩手前」の人数に比例して上がっていないとすれば、せっかく高まった能力の価値は、どんどんコモディティ(日用品)化してしまうと言うのです。これまたなるほど。


フィギュアメーカーの人間が書いていますので、何が言いたいかと言うことはすでにおわかりだと思いますが、フィギュア制作においての、企画・原型制作・製造クオリティについても同様なことが言えるなぁと感じた訳です。(以下少し梅田氏の論旨とずれるところがありますが、ご容赦を。)

フィギュアの原型制作・企画・製造レベルは、ここ数年で一気に底上げされてきています。

フィギュアの写真や新商品レビュー、ワンフェスに出展なさっている各ディーラーさんのHP等々。ネット上にも、そしてリアル世界にも関連書籍が沢山出版されることで、何が良いフィギュアなのかを推察、学習するのに十分な量の情報が溢れ、刻々と体系化されています。各社から発売されるフィギュアは、発売日と同時にネット上の様々な場所で討論され、商品が淘汰されていきます。お客様が日々ネット上に書き込んでくれる言葉の一つ一つも情報となって、学習しようとする制作者や企画者に蓄積されていくのです。次々と発表される新作情報もまた、ネット上に提供される情報の一つなのでしょう。

ガレージキットから始まり、ゆっくりと流れてきた20数年来のフィギュア業界は、ここ数年で激動の時代に突入しました。"高速道路"を突っ走ってくる新たな原型制作者や企画者によって、市場は「出来の良いフィギュア」に埋め尽くされています。今はフィギュアを嗜むお客様が増えてくださっている時期ですが、この後市場の伸びが鈍化した時に、出来の良いフィギュア(=出来の良いフィギュアを作れる人たち)は、普通のフィギュア(=普通のフィギュアを作る人たち)へと、日用品化されてしまいます。

その"渋滞"から頭一つ抜け出る為には、何が必要なのでしょうか。
不夜城グッドスマイルは、この命題を日夜考え続けているわけですが、妥協のない仕事をすることしか出来ない不器用な松戸の夜は、今日もまた更けていきます。直面した難題を創造的に解決するのはオプティミズムを前提とした試行錯誤だと梅田氏は言います。大賛成!
共にこの謎に迫りたい原型師の方々、是非一緒にお仕事をしてみませんか?(笑)


と軽くリクルート活動を行ったところで、今月もグッドスマイルが取り扱う新作が沢山リリースされています。 ネットの海の中から検索して、早めのご予約くださいませ!
次回は、どうやってフィギュアの製造個数を決めているか!?の謎に迫ります。

中国出張中 グッドスマイル アキ


連載漫画「グッスマちゃん」第1話+ 第2話


 | posted by アキバBlog(秋葉原ブログ) geek at : 07:11| コラム