【かーずSP】 奈須きのこ氏に訊く「劇場版 空の境界」インタビュー:後編

【かーずSP】奈須きのこ氏に訊く『劇場版 空の境界』インタビュー :前編


ここで、コミックマーケット72で上映されたPVを視聴

──「いいですねこれ!」

奈須 「文句なしのクオリティだと思います。」

──「今のPVでちらっと出ましたが、腕がもげたりするような残酷な描写はどこまで描かれているのでしょうか?レーティングは設けているのでしょうか?」

岩上敦宏氏(アニプレックス プロデューサー)「それは原作準拠でいこうと。レーティングばっかりは映倫さんが決める事なのですが、多少影になってるので大丈夫ですよ」

奈須 「いやいや今のPV、十分リアルに映ってましたよ(笑)」

──「PVの今の残酷シーン、コミケ会場で『うわー』とか拒絶反応はありませんでした?」

奈須 「全然大丈夫でした。隣では萌えソングが流れてましたし(笑)」

──「(笑) 今回『月姫』『Fate』に続いて三度目のアニメ化ですが、その二作の延長線上にこれがくるのか、または『月姫』『Fate』とはまた違った映像化の方向性があったのでしょうか?」

奈須 「原作がゲームである月姫やFateはビジュアルがあるので、ゲームで表示しているビジュアルを守りながらアニメにしていかなければならないという二重のハードルがあったと思います。原作ファンの期待に応えようとゲームのシーンを再現するのだけど、あれは止め絵だから活きるものなので、その両立が難しい。

一方『空の境界』は無から映像を作る。守らなくちゃいけないビジュアルがないので、その分自由なんですが、無から作るという生みの苦しみもある。どちらも高いハードルだと思うんですが、『空の境界』の方がそういった意味では新鮮な驚きを持って観てもらえるかなと思います」

──「監督さん、スタッフさん、奈須さん、それぞれにビジュアルが頭の中にあるじゃないですか。その食い違いは起こりますか?」

奈須 「それはどうしても起こると思います。ただ食い違っても僕には絵を描く能力はないので、見せていただいた絵に対して『Go』か、もしくは『ここはこういう雰囲気になりませんかね?』という程度で。

もっとも、『空の境界』の美術ボード(*脚注)はどれもこれも僕の想像を常に上回っているので、意見のだしどころがないのですが。なので劇場版を観た後に原作を読もうとしてる人には『読まないで』って止めたい気分です(笑)。」

(*脚注)「美術ボード」:監督やスタッフ間で美術の方向性を確認するために、美術監督が描く指示書のような絵の資料。



■『空の境界』声優キャスティングはこうして決まった

──「声優さんのキャスティングは、ドラマCDとはだいぶ変わっていますがどのように決められたのでしょうか?」

奈須 「ufotableさん、アニプレックスさん、講談社さん、TYPEMOONの四社でオーディションを投票制にして決めました。 しかし基本的にはアニメを制作するufotableさんが『こういうフィルムにしたいから、こういう声質が欲しい』というのが一番優先される事で、ufotableさん内で意見が割れた時に僕らの意見が参考になるという程度です。劇場版なので、巨大な密室で流れる声質ならば多少シックな方がいいだろうとか、声のトーンは低いほうがいいだろうって所から選び直しが始まっています」

──「奈須さんが絶対に譲れない人というのは、中田譲治さん以外にいましたか?(笑)」

奈須 「いえいえ(笑)。僕は一役変えるならいっそ全員変えたほうがいいと思っていたんですが、ufotableさんの方がどうしても中田さんがいいという意見でした。荒耶に関しては譲治さんがいい。譲治さんに関しては荒耶がいいとか言ってたんですよ(一同笑い)。

両儀式の坂本真綾さんに関しては、オーディションの段階でかなり式のイメージが強かったんで坂本さんで決まって欲しいとは思ってました。」

──「僕はドラマCDの川上とも子さんの式も好きなんですが。」

奈須 「僕だって川上式は大好きですよ! あと新キャストを公開したら、知り合いから抗議のメールとか貰いました(笑)。 川上とも子さんはアッパーで、ちょっと元気がいい式。坂本真綾さんはダウナーな式。 『劇場版 空の境界』の重い雰囲気に合うということで今回は坂本さんに演じていただくことになりました」

──「黒桐幹也に鈴村健一さんというのはかなり意外だと思いました。」

奈須 「鈴村さんは良い声を出されるんです。オーディションの時に聞いた若い声が嫌味がなくて、それでいて主人公っぽい、これは幹也のイメージだって。」

──「蒼崎橙子役に本田貴子さんを起用された理由はなんでしょう?」

奈須 「まず声に迫力があって、それでいて女性らしい方。そしてこの物語で一番長く話すキャラクターなので、声をずっと聴いていても飽きがこない方がいいだろうと。あとは眼鏡を外した時の怖い声も出せる方という事で」

──「そして黒桐鮮花役に藤村歩さんですか。このキャラクターが一番難航したんじゃないかと思うんですが。」

奈須 「そうですね、思いっきりピンで可愛くするか、劇場のシックな雰囲気に馴染ませるか、って二択になって、後者にしました。」


──「ちなみに、奈須さんにとっての萌えキャラって誰なんでしょう?」

奈須 「浅上藤乃が僕の中ではストレートな萌えキャラです。病んでるキャラが大好きで、気がついてみると病んでるキャラしか書いてないような …なんですが、動いている絵を見て両儀式が一位になりました。ダウナーの声も病みヒロイン好きとしてはたまらない(笑)」

──「ちなみに、意識しているライバルのアニメ映画はありますか?」

奈須 「綺麗な発言をすれば、一話前の『劇場版 空の境界』になります。それぞれ監督が違うので、物語としては連続していますが、映像作品としては違うものなので」

──「そういえばヱヴァンゲリヲン新劇場版の事をご自身の日記(竹箒日記)で熱く語ってらっしゃいましたね。」

奈須 「自分でも反省しております(笑)。ですがあの手の衝動をはき出せる作品というのは貴重なので、せめてもの恩返しとして、美味しい物は美味しいとお礼を言っておかないと。今は公開時期が被らないように祈るだけです。でも早く、明日にでも破を公開してほしいですけどね!ファンとして今度のヱヴァンゲリヲン新劇場版はひたすら嬉しい。王者が変わらずに無敵だっていうのは、一兵卒としてたまらなく嬉しいんです」

──「最後に、ここら辺を期待して欲しいって見所を、原作ファンと原作を知らない人、両方に向けて何か一言お願いします。」

奈須 「原作ファンには、今までテキストで済んでいた事を映像化した時に起きる驚きを体感してほしい。例えば式って多分に嘘を含むキャラクターなんですよ。着物じゃあ足は開かないものですから、あの格好でアクションは本来できないんです。そういう嘘を映像化した時に、どこまで原作を守りつつ美しいものが出来るのか。

例えば先ほどのPVでも、両足そろえて行儀正しく飛ぶとか。そういうところに注目して欲しいです。未読の方には、式っていう凛々しくもあり、少女っぽいところもあるヒロインの振る舞いにまず魅力を感じて欲しい。で、そこを足がかりにして物語に入ってくれたらいいんじゃないかなって思います。」

──「本日はありがとうございました」

奈須さんはかーずSPを知っていてくださっていて、「ヤンデレ大全読みましたよ」と言われてしまい、『奈須きのこ作品に見るヤンデレヒロインたち』コーナーを書いた身としては激しく動揺してしまいましたが、非常に密度のある濃いインタビューはいかがだったでしょうか?

劇場版 空の境界は2007年12月1日の第1章を皮切りとして、12月29日に第2章、2008年1月26日に第3章が公開される予定です。

劇場版 空の境界
竹箒
TYPE-MOON
【かーずSP】奈須きのこ氏に訊く『劇場版 空の境界』インタビュー :前編

取材・文:かーず(かーずSP

withAjax Amazon | posted by アキバBlog(秋葉原ブログ) geek at : 07:57| コラム  



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