書籍や音楽CDなど、販売価格に対して製造原価が低い物の場合は、委託販売のケースも多く、店頭への出荷数も実際の消費量よりも多めに供給することが出来る流れがあります。本やCDは増産も比較的スピーディなので、市場に適量を追加供給することも出来ます。
フィギュアはどうでしょう。
日常品と違って、「これじゃないとだめ!」と他に代わりのない物の場合は、先々の消費を見越して計画生産することが難しい。 「1/8スケールPVCフィギュア」を例に取ると、製造数は当社取り扱いの商材の一般的なもので国内投入が4000個前後。人気商品で10000個。まれに爆発的に売れて数万個。増産にも手作業工程が多いため、最短で2ヶ月ほどの時間がかかります。
お店や問屋さんの仕入担当者さんが、『経験』と『感覚』で数量を予測して、メーカーの受注締め切り日(当社の場合は発売の2ヶ月ほど前です)までに、発注数量を確定しますので、在庫リスクを考えても『大勝負』はそうそう出来ませんよね。
発売後の動向が、「良い」方に転がった時には『瞬殺』となるわけです。逆に「悪い」方に転がった場合には「叩き売り」が待っています。
「欲しくない!」となればタダでもいらない、4000円から6000円の高単価な商品ですから、店舗さん・流通各社さん・発売元メーカーを含めて、商品の実際の販売ポテンシャルの判定は、とても難しいものです。現在の値引き販売の流れの中では、数%を売り残してしまうと、その商品は赤字です。
市場が伸びている今の時期には、商品点数も増え続けていますので、『商品力を読む』ことは、より難しくなってきています。結果として供給量は「少なめ」になります。お客様はこの状況を経験的に感じてくださって、ありがたいことに「予約」をして頂けているのが現状なのです。
この状況に対応するメーカーの姿勢は様々です。
供給過多に振れた場合は、商品やブランドの価値を下げて行くことになりますし、予測以上の受注が集まった場合には、戦略的に(または製造能力との兼ね合いで)メーカーが数量をカットする場合があります。おもちゃのような嗜好品の世界では、初代「たまごっち」の例を挙げるまでもなく、ブームによる供給過多で市場が一気に壊れたことが過去に何度もありますから、大切にしたい市場で長く商売を続ける為に、数量カットをする思考を強く否定することはできません。
では、グッドスマイルはどうなの?
原型師さん、企画マンが精魂込めて制作したフィギュアを出来るだけ沢山の方に、愛でてもらうことを使命としているグッドスマイルは、いかにして店舗さんや流通さんに商品の販売ポテンシャルを把握してもらうか(=市場に適数の商品を出荷するか)、を命題にして試行錯誤しています。
詳細で美しい商品写真を用意すること、製品サンプルを出来る限り開示すること、彩色見本と違わない製品を製造すること、等々。営業活動と連動したプロモーションや、ワンフェスなどでのホビーの裾野を広げる広報宣伝活動もその一環です。その結果としてユーザー様のご期待の表明として頂いた事前予約は、よほどのコトが無い限りカットすることの無い様にしようというのが、今私達が取っている方法論です。頑張って営業して、宣伝して、受注をカットするなんてもったいないっ!という貧乏性のなせる技かもしれませんが(笑)。
高度に情報化された現代では、正解は(数名のメーカーの担当者ではなく)より多数の存在であるお客差の動きの中にあるというのが、グッドスマイルの選択です。
お客様の予約状況を見ながら、松戸の不夜城は今日も一喜一憂して日が暮れていきます。
グッドスマイル アキ
連載漫画「グッスマちゃん」第3話 第1話&第2話
| posted by アキバBlog(秋葉原ブログ) geek at : 07:15| コラム
フィギュアを買う時にいつも思うのはこれは今予約しないともう手に入らなくなるのだろうかと言う点。それに伴って気になるのはメーカー側の思惑だ。だが、メーカーに知り合...
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