【コラム・ネタ・お知らせetc】グッドスマイルカンパニー　"フィギュアを量産する"ということ

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メリッサ・セラフィの金型の一部です

　立体物を複製、量産する方法は色々ありますが、フィギュアメーカーが現在主流な製造方法としているのが、「金型」によるPVCの「射出成形」です。大きな金型の中にフィギュアの形状を反転した空洞を作り、その空洞めがけて強い圧力で、高温で液状になっているPVCを注入（射出）して、冷却による固形化の後、金型から成型物を取り外すという方法です。

　本来金型を使った射出成型品は、長期間に渡って成形作業を続けること（大量生産）で採算を取っていくことになります。金型を使用する製品は、量産効率が良く、製造設備として耐久性も高い”金型を使った射出成形”をコストの面からも選択しているということですね。金型はとっても高価なものですが、量産によって設備償却を狙うわけです。「金型」という製造設備は、大量生産前提で開発する場合が多いのですが、１／８PVCフィギュアの場合は、長くても数週間しか成形しませんので、美観・耐久性・製品の耐破壊性等々、量産性以外のメリットにも注目して、この方法がとられているといっていいでしょう。

フィギュアの金型もご多分にもれず、高価です。

　メーカーの製造に対する思想によって、金額には大きな開きがありますが、１／８サイズのフィギュアを例にとれば、数百万円の投資になります。厳しい品質競争の中では、原形製作費用、金型の投資、そして最小製造ロット分の製造コストを合算すると、一つの商品が企画ＧＯ！となった時点で少なくとも５００万円、多い場合は１０００万円を軽く超える額の投資が確定しちゃいます。商売としてフラットに考えると結構リスキーです（笑）

　PVCフィギュアは作品ごとの共有パーツがほぼ無いので、毎回新規金型の作りおこしになります。中規模以上のメーカーになると、毎月数セットの金型制作をスタートさせています。グッドスマイルでも年間３０〜４０セットの金型が制作されることになります。この大量の新規開発は、メーカーやその製造を請け負う会社にとって、大きな負担、リスクであると同時に、目の回る様なスピードでの開発・クオリティ競争によって、開発力・商品クオリティの上昇にとっても役に立っている側面もあります。ここ数年のPVCフィギュアの目覚ましいクオリティアップは、この開発スピード・開発量によるものが大きいのですね〜。

　成形作業後は、まるで一つ一つガレージキットを完成させるように、熟練の職人が彩色・組み立てをしていきます。金型による射出成形という製造手法を選択した「量産品」を、量産とは対極にある「熟練の手作業」でゆっくり丁寧に完成させていく様子は、フィギュアという商材の特殊性を強く感じさせる光景です。

メリッサ・セラフィの商品写真を見て どの部分の金型なのか、探してみよう！

　お客様のお好みは様々で、商品によってお気に召す物と、そうでない物があると思いますが、PVCフィギュアを手に取った際には、パーツ分割や部位ごとの素材の堅さの違い、（もし分解できるチャンスがあれば）内部構造までよ〜く見てみてください。ノウハウがぎっちりっ！詰まっています。"製造視点"でのフィギュア観察も面白いものですよ。

　開発者の情熱とお客様の要望が生んだ、「美観」に極端にフォーカスした完成品フィギュアという作品群。製造という視点から見ると、美術的な側面での品質と量産性というアンビバレント（両価性）な性質をもった完成品フィギュア。世の流れは多品種少量生産ですが、完成品フィギュアはその中でも、時代性の強い興味深い商材です。

取り残されてなるものか！と松戸の不夜城は今日も決死の製造監修を続けます。

グッドスマイル　アキ

連載漫画「グッスマちゃん」第４話

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