ニトロプラスが1月に発売いたしました月光のカルネヴァーレ
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どうもこんにちはニトロプラスのシナリオライター下倉バイオです。
今回はゲーム制作の思い出を愉快に語れと言われた ので、本当は涙の出来事ばかりだったのですが、それを書くとニトロくんに殴られるので、あと撃たれたりもするので、今回はなるべく愉快にゴシックノワールADV月光のカルネヴァーレの制作過程を振り返ってみようと思います。
【企画・プレゼン】
「何か企画出せ」と偉い人にいわれて企画を提出しました。最初に提出したプロットは『不死のバクテリアを身体に宿したヤクザのおっさんがアンドロイドを拾う未来SF』でした。今読むとあんまりです。
ところがそんなプロットも、先輩である虚淵玄・鋼屋ジン両氏から、『ここはズバリ人狼マフィアじゃよ!ゴッドなファーザーでいくんじゃよ!』、『それならロボットの方は、オートマタなんてどうかしらぁ?錬金術入れちゃうぅ?』という適切きわまりないアドバイスを賜り(一部誇張)、美女と野獣、人狼マフィアVS錬金術オートマタの話に落とし込むことができました。
プレゼンでは、何度も泣いたり泣いたり泣いたりしながら、なんとか企画にGOが出たのですが、実は『月光のカルネヴァーレ』というタイトルはずいぶん後になって決まったものでした。プレゼン当時は仮タイトルで『DIRGE』という名前でしたが、その後に出た某コンシューマー作品と丸被りになってしまい、新タイトルをつけなければならなくなったのです。 『イタリア語に訳して、「Lamento」とかが妥当かなあ』と自分ひとりでこっそり考えていたところ、ある日突然会議室の予定に「Lamento」とか書かれていたので、テレパスの存在を本気で疑いました(注:ニトロプラス キラルでつくっていたBLゲームと偶然同名称でした)
【プロット・箱書き】
プロットを各ルートごとにまとめます。全体の見取り図が見えてきたおかげで、要らないキャラクターが削れたり、頭の愉快なキャラが増えたり、男性キャラが女体化したり、まあ色々な変更がありました。今回は後半の展開をルートごとに大きく変え、『各キャラクターの立ち位置を全く違うものになるようにしよう』などと企んだせいで、後半の展開はかなり苦労しました。
その後、シーンごとに登場人物や場面設定などを記した『箱書き』を書いていきます。月光のカルネヴァーレは、コンセプトのひとつに『群像劇』があり、キャラクターの数や場面が多かったので、思ったよりも随分手間がかかりました。
この辺りの作業は、ノートに走り書きをしながら考えをまとめていくのですが、今ノートを読み返すと謎のアイディアが氾濫していて笑えます。ぬいぐるみ@ウォルマート・ヤンヤン走りミミック・ネイチャーデブ。何に使う気だったのか、さっぱり意味がわかりません。
【シナリオ・CG発注】
シナリオを作成します。ひたすら書きます。予定表を見返すと、シナリオを書き始めたのは2005年8月はじめ。完成は2006年7月末なので、丸1年かかった計算になります。シナリオ作成は、基本的にひとりの作業なので孤独だったりしそうですが、奈良原一鉄氏が隣で突然刀を振り回し始めたりする愉快な職場なので、それほど苦にはなりません。
並行作業で、原画を担当してくださったUNKNOWNの大崎シンヤさんと、立ち絵や武器デザイン・イベントCG等の作業も続けていきます。外注作業ということでなかなか顔を合わせる機会が少なかったのですが、シナリオが先行したおかげで、多少はスムーズに進んだかと思います。
【音声収録】
ある意味では、自分の書いたシナリオを最も早く、最も深く読んでくださるのは、声優さんたちになったりします。一年中脚本を読み続けている正にプロの方々にどんな評価をされているのか――音声収録は本当に胃に悪いです。特にベテラン声優の方々に台本を読んでいただくときは、緊張で脇の下に変な汗をかきまくり。お褒めの言葉を戴いたときの感動もひとしおです。
もちろん、音声収録は非常に楽しい場でもあります。キャラクターの台詞に音声が吹き込まれていく様子は純粋に感動しますし、思わぬアドリブで笑いが止まらず、腹筋が攣ったのも一度や二度ではありません。収録期間は1ヶ月余りですが、これが一番印象に残っている期間かもしれません。
【デバッグ・マスターアップ】
素材が集まり、スクリプトが組まれ、プレイできるようになったゲームを、ひたすらデバッグします。音声や誤字脱字をチェック・修正するだけでかなりの手間ですが、シナリオ担当者としてここで手を抜くわけにはいきません。連日の徹夜で精神に変調をきたし、『突然カルボナーラ6人前に挑む者』、『深夜に妖しげな袋を被って変身する者』などもいますが、構っている暇はないのです。
なにせ今回は年内マスターアップ。デバッグの合間夕飯を食べに外に出たら世の中はクリスマス真っ最中で秋葉原に手繋ぎカップルが氾濫する合間を縫ってひとりラーメン屋に着いたら店で中島みゆきが流れてきても泣きません。泣くもんか!
とまあ、そんなこんなで幾多の苦難をくぐり抜け、幾多の骸を乗り越えて、月光のカルネヴァーレがとうとうマスターアップ!となったわけです。
おおざっぱに、シナリオライター下倉の仕事を振り返ってみましたが、喉元過ぎれば熱さを忘れるです。今思えば良い思い出です。 もちろん、ここに書いたのは下倉ひとりの仕事です。ここには書ききれないほどたくさんの方々のご協力があって、初めて『月光のカルネヴァーレ』は完成しました。
想いの詰まった作品ですので、楽しんでプレイしていただければこれ以上の幸せはありません。
さてさて、マスターアップした後もまだまだ仕事は続くわけで、下倉は、現在もチャンピオンRED連載のコミック版『月光のカルネヴァーレ』(原作:ニトロプラス 脚本:下倉バイオ 漫画:隅田かずあさ)等々の作業をしております。月光のカルネヴァーレはこれからも続きます。
ニトロプラス シナリオライター下倉バイオ
【バックナンバー】
・ワタナベカズヒロ、新アルバム製作現場を直撃
・月光のカルネヴァーレ 発売直前奮闘記
・ニトロプラス ニトロなコミケができるまで
・ニトロプラス みなさんはじめまして!
| posted by アキバBlog(秋葉原ブログ) geek at : 06:20| コラム